海女文化が今も息づく三重県・鳥羽の海辺の町、相差(おうさつ)。伊勢といえば、鳥羽水族館のイメージはあったものの、「相差」という地名に出会ったのは今回が初めてでした。
実際に訪れてみると、相差は、現役の海女さんの営みがすぐそばにあり、海で揚がる魚介の恵みを心ゆくまで味わえる場所。グルメ好きはもちろん、土地の背景ごと旅をしたい人ほど、ぐっと刺さる町です。
そんな相差を味わいきるなら、宿選びが重要。そこで選んだのが、食べきれないほど料理が出るお宿「丸善」です。
今回は、相差で泊まりたい「丸善」と、周辺のおすすめ観光スポットをモデルコース付きでご紹介します。
1. 海女の町「相差」とは?読み方・魅力を紹介

三重県鳥羽市にある相差町。さて、みなさんはこの町の名前を「おうさつ」と読めましたでしょうか。
相差は、海女文化が今も日常として息づく場所です。日本一海女さんが多い町として知られ、2026年2月現在、79名の海女さんが活躍しています。
伊勢海老やサザエ、ひじきなど、海の恵みが暮らしのすぐ隣にある町です。

そしてもうひとつ。相差を知るうえで欠かせないのが、「セーマン・ドーマン」という二つの印です。これは海女さんたちが大切に受け継いできた、魔除けのおまじない。漁に出るとき、磯着や漁具に身につけるのだそうです。
セーマンは、一筆書きで描ける星形の印。途切れずに描けることから「必ず陸へ帰れる」と信じられてきました。
一方のドーマンは、格子状の印。多くの交点があることで、悪霊を迷わせ、災いから身を守るといわれています。
そんな印は、相差の日常の中にもそっと息づいていました。相差の町を歩いていると、「セーマン・ドーマン」が刻まれた石のフンドウをところどころで発見。

町中で見かけた印は、相差が海とともに生きる町であることをそっと教えてくれました。
2. 相差で泊まるなら「丸善」がおすすめな理由

そんな相差は、日帰りで帰るのはもったいない町。食の魅力が濃いからこそ、泊まって夜のごちそうまで味わうのがおすすめです。今回は、No.1そんな食いしん坊な旅に寄り添ってくれるお宿「丸善」に1泊してきました。
魅力① 相差の海の幸をたらふく味わえる料理
丸善のいちばんの魅力は、相差の海の幸をたらふく味わえる夕食です。

なかでも伊勢海老を3尾も味わえるコースが大人気。ここまで贅沢に、でも肩肘張らずに伊勢海老を堪能できる世界があったなんて……。きっと、その豪華さに衝撃を受けるはず。
伊勢海老だけで終わらず、季節の魚介や、畑で採れた野菜など、相差の恵みが惜しみなく続く幸さを味わえます。
魅力② 現役海女さんに会える、海人文化に触れられる宿泊体験

丸善には、現役の海女さんがいることも魅力のひとつ。女将さんのお母さまであるじゅんこさんは、いまも現役の海女さんです。
海女の暮らしを知る人がいるからこそ、海の幸をいちばんおいしく味わえる出し方を知っている。そこに、丸善の強さがあると感じました。
魅力③ 女将さんの、また会いたくなるお人柄

そしてもう一つの大きい存在が、看板女将のさおりさん。気さくで親しみやすく、初めてでもどこか「ただいま」と言いたくなる空気をつくってくれます。「また会いたい」と思わせてくれる人がいるのも、丸善の強さです。
3. なぜリピーターが多い?「また帰りたくなる」丸善の魅力

丸善は、創業約45年。2011年のリニューアルを経た今も、リピーターが絶えない人気宿として知られています。リピーター率はなんと約8割というから驚きです。
理由はシンプル。「また来たい」だけでなく、「次は大切な人を連れてきたい」と思える宿だから。
実際に泊まってみると、料理の満足感はもちろん、満足度に対して良心的な価格設定も印象的です。物価が上がるなかでも、急激な値上げに頼らず、できる範囲で踏ん張ってきた。そんな姿勢も、長く選ばれる理由のひとつなのかもしれません。
4. 8タイプから選べる「丸善」の客室

客室は全部で8タイプ。各部屋には、相差の自然や海を思わせる名前が付けられています。
1) 8タイプの客室

8タイプのお部屋は、和洋室と和室の2種類。それぞれ簡単にご紹介します。
波(和洋室)


相差の千鳥ヶ浜の海をイメージしたお部屋。
あじさい(和洋室)


相差にある梵潮寺に咲く、真っ赤な紫陽花をイメージしたお部屋。
黄金(和洋室)


相差の海から昇る日の出の色をイメージしたお部屋。
防風(和洋室)


相差の海辺に自生する植物をイメージしたお部屋。
水仙(和室)


シーズンになると、相差から松尾までの道を彩る水仙をイメージしたお部屋。
桜貝(和室)


千鳥ヶ浜を散歩していると出会うピンク色の桜貝をイメージしたお部屋。
菖蒲(和室)


相差のあかげの山の麓に咲く菖蒲をイメージしたお部屋。
真珠(和室)


鳥羽らしい真珠をイメージしたお部屋。隣には多目的トイレも。
2) こだわりの寝具
丸善は、食事だけでなく「睡眠」にも力を入れています。
リニューアルの際、いくつもの寝具店を実際に回り、最終的に寝具一式は伊勢にある寝具店「眠り屋ヒラマツ」で統一したそう。

中でもこだわったのが枕で、改良を重ねて作られたものを採用しています。
枕は、オリジナルのカーブが特徴で、寝返りの動きを妨げにくく、頭・首・肩まわりをやさしく支えるつくりに。首まわりがラクに感じて、旅先なのに寝つきがよかったのが印象的でした。
翌朝、「この枕、どこで買えますか?」と女将さんに声をかける方も多いそう。思わず聞きたくなる寝心地というのは納得です。
3) 今回宿泊した客室

今回宿泊したお部屋は和洋室の「防風」。和洋室らしく、寝室はリビングスペースと分かれているスタイルです。

シンプルながら、浴衣やタオルなど、必要なものがきちんと揃っていて、落ち着いて過ごせる空気がありました。

お部屋には、ほっとひと息つけるお茶菓子も。

丸善のかわいいロゴマークが入ったタオルはお持ち帰り可能でした。

座椅子にもこだわりが。ふかふかで座り心地がよく、食後にのんびりする時間が心地よかったです。柄は相差の海をイメージしているのだとか。

こだわりの枕と寝具のおかげでぐっすり。やっぱり寝具は大事だなと思わせてくれる1 泊でした。

館内案内には相差の散策マップも載っていて分かりやすく、宿の前後にどこを観光しようか考えるのに便利でした。
5. 相差グルメを完全攻略!食べきれない料理で幸せ気分な夕食

丸善の目玉と言えば、たらふく食べられる夕食と紹介しましたが、実際にいただいたメニューを改めてご紹介。
丸善の夕食は、ただ量が多い、という訳ではありません。「せっかく相差まで来てくれたのだから、お腹いっぱいになって帰ってほしい」そんな思いが、そのまま料理の数になっていました。

今回予約したプランは、伊勢海老が3尾つく「伊勢海老網漁コース」。お造り・タルタル焼き・鬼殻焼きと、同じ伊勢海老でも味わいが変わる食べ比べができる豪華な内容です。

まずは梅の食前酢で乾杯。梅は畑で採ってきたものを漬けているそうで、仕込みの丁寧さが最初から伝わってきます。

次に運ばれてきたのは、膳先小鉢7品。海の町らしい小さなおかずが並んで、食欲のスイッチが入ります。なかでも印象に残ったのが、次の2品でした。(季節によって内容が変わります)

正月の食卓に欠かせない、相差の名物「相差なます」。丸善では、その簡単版として、大根ときゅうり、しめ鯖で仕立てた、さっぱりとした味わいを楽しめました。
本来の相差なますには、炊いた蓮根や高野豆腐、しいたけなども入り、具材をそれぞれ別々に味付けしてから最後に合わせるのだそう。ひと皿の裏に、手間ひまを惜しまない相差の暮らしが見えてきます。

「これ、買えますか?」と聞かれることが多いという「海苔くらげ」。細切りのくらげに海苔の旨みが絡んだ甘辛い一品で、コリコリ食感が心地よく、ついご飯が進んでしまいました。

2人前から楽しめる船盛り。これだけでテーブルが一気に華やぎます。この日はヒラメで、身は弾力があってぷりぷり。噛むほどに甘みが広がりました。

揚げ物は、畑で採れた野菜が主役。春菊と里芋は畑で採れたもので、里芋は一度炊いてから揚げるという手のかけ方。牡蠣とエビの天ぷらは、ピンクの岩塩でいただきます。

煮魚はこの日はカサゴ。味付けは、漁師だったさおりさんのお父さんから教わった方法だそうです。
さて、ここからはお待ちかねの、伊勢海老の食べ比べタイム。

まずは、伊勢海老のお造り。口に入れた瞬間はこりっと心地よく、そこからはするするっとほどけるように溶けていきます。噛むほどに甘みがじわっと広がって、いちばんストレートに素材の強さが伝わる食べ方でした。

次に、タルタル焼き。濃厚タルタルが、締まった身にしっかり絡んで、ひと口目から満足感が強い一品。お造りの透明感とは対照的です。

そして鬼殻焼き。殻ごと豪快に焼くスタイルで、殻をねじると、ぷりっと身が登場します。ひと口目から身が引き締まっていて、噛むたびに「ぎゅっ、ぎゅっ」と旨みが押し返してくる。この食感が贅沢の極みでした。

通常はサラダとおすましですが、冬季は寒さに合わせて鍋にしているそうです。野菜は、これまたしめじ以外はほぼ畑で採れたもの。

ウニがとにかく濃厚で、ひじきと混ざり合うウニ飯。ひじきが三重県のブランド食材だということを、今回初めて知りました。
ひじきは、現役の海女・じゅんこさんが自ら採ってきたものだそう。さおりさんは、採れたてのひじきを運んだこともあるそうで、「ひじきは海水を含んで重いんよ」と、そんな裏話も教えてくれました。

デザートには「ところてん」。じゅんこさんが採ってきたテングサを、じゅんこさん本人が仕込んで作るという贅沢な一皿です。食べるときはきな粉をかけて、わらび餅みたいに楽しむスタイル。
海の恵みは海から、野菜は畑から。相差の暮らしをまるごと味わえるような夕食でした。
6. 無料の貸切風呂も!丸善のお風呂
丸善のお風呂は、男女別の大浴場に加えて、無料で使える貸切の「ひとり湯」があるのがうれしいポイントです。
一人時間がととのうご褒美「貸切ひとり湯」

貸切風呂は2つ。
入浴時間は、午後3時~午後11時、翌朝は午前6時~チェックアウトまでで、時間制限はなく、空いていればそのまま利用できます。
誰にも気兼ねせず湯船に浸かれる時間は、やっぱり至福です。
ハート型の貸切風呂「はーと」

名前の通り、浴槽がハート型の「はーと」。スイッチを押すと、お湯がミルク色に変わります。
写真映えするかわいさはありつつ、入ってみると意外なくらい落ち着く。しかも、思った以上に広く、ゆっくりくつろげました。

貸切ひとり湯「波」

もうひとつの貸切風呂は、海の上に浮かんでる気持ちになれるような「波」。こちらも手足を伸ばしてゆっくりくつろげました。

貸切ひとり湯の特別感

貸切ひとり湯だけの特別感も。シャワーヘッドはRefa、そしてシャンプー類はMIKIMOTOです。

MIKIMOTOといえば、真珠で知られる三重県・鳥羽市発祥のブランド。
世界ではじめて真珠の養殖に成功したことで名を広め、いまやジュエリーだけでなく、真珠由来成分を活かしたスキンケアラインも展開しているのだそう。
こぢんまり落ち着く大浴場


タイル使いがおしゃれな男女別の大浴場。こぢんまりしていて落ち着くタイプでした。

女性の脱衣所にはスキンケアシリーズも用意されており、手ぶらでも安心して利用できるのが嬉しいポイントです。
7. 朝の相差が好きになる、やさしい朝ごはん

朝食は基本的にバイキングスタイルですが、宿泊者が少ない日は御膳スタイルになることも。ちょうど訪れた日は御膳での提供でしたが、きれいに整えられたお膳が並ぶテーブルに、朝から気分が上がりました。

一番楽しみにしていたのは、伊勢海老の味噌汁。伊勢海老の頭がどんと入っていて、見た目からして豪華です。ひと口すすれば、伊勢海老の旨みがぎゅっと凝縮されていて、これだけでご飯が進む。そんな一杯でした。

米粉で作られた自家製パンはふわふわ。ジャムをかけていただきました。

タイのアラ炊きも豪華に登場。朝からしっかりごちそうで、気づけばお腹いっぱいです。
8. チェックアウト時のお楽しみ!ガチャポンで旅の締めくくり

丸善での滞在は、最後まで楽しい。
チェックアウトのタイミングで登場するのが、無料で回せる宿オリジナルのガチャポンです。海女のじゅんこさん、女将のさおりさん、さおりさん姉妹のファミリーがデザインされたクリアキーホルダーが当たるという、なんとも愛らしい仕掛けです。

さらに、次回の宿泊で使えるお楽しみ券も一緒に入っていて、「また帰ってきたくなる」気持ちをそっと後押ししてくれました。
リニューアルで変えたこと
以前の丸善は、いわゆる民宿でした。豪華さで魅せるのではなく、よく食べて、気持ちよく眠って、また海へ向かう……。相差の暮らしに寄り添う宿。その土台をつくってきたのが、先代のお父さんだったと伺いました。
そして、2011年のリニューアルでは、新しくするだけでなく、「より快適に過ごせる宿」にするための工夫が加えられたそう。
まずは耐震対策。安心して泊まってもらうための基礎をしっかり整えました。

そして海の町・相差ならではの工夫も。海水浴場から戻ったあとは、どうしても身体が濡れたままになってしまいます。そこで大浴場の手前にシャワーを新設し、さっと浴びてから脱衣所へ向かえる動線に。
小さな不便をそのままにせず、宿のやさしさへと変えているところが印象的でした。

さらに、一人でも心地よく過ごせる場所として囲炉裏スペースを設置。グループで訪れても、それぞれが静かにひと息つける余白が生まれています。
民宿として始まり、お父さんが守ってきた丸善。リニューアルは、その原点を手放すのではなく、これまで通ってくれたお客さんを大切にしながら、「また帰ってきたくなる宿」へと整えていくための進化だったのだと感じました。
9. Instagramフォローでうれしい特典も

丸善の公式Instagramをフォローすると、MIKIMOTOのフェイスシートまたは喜製茶の和紅茶をプレゼント。どちらも女性にはうれしいセレクトです。
私はMIKIMOTOのフェイスシートをいただき、旅の余韻にひたりながらお肌をしっとりケア。さりげなく、三重らしさを感じられたのもうれしいポイントでした。
10. 相差観光と合わせて楽しむ!周辺のおすすめスポット

相差を訪れたなら、宿泊の前後に観光も楽しみたいところです。相差の魅力をより深く知るなら、海人文化に触れる時間をぜひ。宿泊しながら楽しむと、相差という土地の背景がぐっと立体的に見えてきます。
1) 相差海女文化資料館

海女文化を知る入口になるのが、相差の観光中心部にある「相差海女文化資料館」です。入館は無料。
海女さんの暮らしや歴史を、道具の展示や等身大のジオラマなどで立体的に学べます。

なかでも興味をひいたのが、館内に掲げられていた『「海人文化」を残したい5つの理由』というメッセージです。
まず驚いたのは、海女の歴史が約3,000年〜5,000年ともいわれていること。はるか昔から、女性たちが素潜りで海に入り、海と向き合いながら暮らしてきたという事実に、衝撃を受けました。

そして、もうひとつ心に残ったのが「海女さんは自立した女性である」ということ。 かつて男尊女卑の風潮が強かった時代においても、ここでは女性が技術を磨き、海で稼いできた。そう思うと、相差はずっと昔から、女性が自分の力で生きることを体現してきた町なのだと感じます。
「女性の自立」という視点がおもしろく、この時強く心に残ったのですが、旅を進めるうちに、その言葉がただの印象ではなく、相差の歴史や暮らしそのものを表しているのだと、少しずつ腑に落ちていきました。
2) 神明神社(石神さん)

パワースポットとして女性に人気を集めているのが、神明神社の境内にある石神社。通称「石神さん」。
古くから海女さんたちが海の安全を祈ってきた場所で、「女性の願いなら一つだけ叶う」と言われています。

神社に着いたら、まずは参拝から。手水でそっと身を清めてから、御本殿へ手を合わせます。

参拝を終えたら、本殿の目の前で存在感を放っている名物の巨大おみくじを。

「全国で2番目に大きい」と言われるだけあってずっしりとした重みがあり、えいっと振る瞬間までちょっとしたイベントのよう。

結果は末吉でなんとも言えない気持ちになりましたが、書いてあることを胸に焼き付け、今年も頑張ろうという気持ちになれました。
そして今回の目的地である境内にある石神さんへ。

お願いごとは絵馬ではなく、専用のピンクの用紙に書くスタイルで、「願いはひとつ」と決まっています。

できるだけ具体的に言葉を選び、願い箱へ。鈴を鳴らして二礼二拍手一礼。

あとは叶えてくれることを信じて、前に進むだけです。

社務所には、麻布で仕立てられた手作りのお守りが並び、その裏には「セーマン・ドーマン」の印が。災難を遠ざけ、願いごとが実を結びますように。そんな祈りがそっと込められているそうです。

私が手に取ったのは、石を麻布で包み、本真珠を添えたお守り。文字や印はすべて手書きとのことでした。

中の石は、石神さんを上がった先にある海岸で祈願された岩を用いているそうで、海女の町ならではの力強いパワーを感じます。
3) 海女小屋「相差かまど 前の浜」

相差を訪れたら、ぜひ立ち寄ってほしいのが海女小屋体験。なかでも人気なのが、現役の海女さんが炭火でもてなしてくれる「相差かまど 前の浜」です。

海沿いに沿ってあるいていくと、崖の側にポツンと立っているのが「相差かまど 前の浜」。

海女小屋とは、海から上がった海女さんたちが身体を温める暖を取る場所。かつては実際に小屋として使われてあたこの小屋には、最盛期には17人ほどが集まり、当時は人でパンパンになるほどだったそうです。
そんな場所で、今は海女さんの話を聞きながら食事を楽しめます。

ランチでいただけるのは「海女小屋料理体験コース(4,500円)」。
サザエをはじめ、相差で獲れた旬の海の幸をいただけます。かまどの前に座ると、パチパチと弾ける炭の音。海の幸が網にのせられ、ふわっと立ちのぼる煙。潮の香りが、ふわりと鼻をくすぐります。

かまどを囲み、海女さんの話を聞きながら食事ができるのも、この体験ならではの魅力です。
目の前で焼いてくれたのは、現役海女の中村さん。にこっと笑うその姿がとてもチャーミングで、すぐにファンになってしまいました。

最初に登場したのは「あらめ」。見た目はひじきに似ていますが、相差の海でよく採れる海藻のひとつ。
特に伊勢志摩では昔から食卓にのぼる、なじみ深い存在だそうです。ひじきよりも少し厚みがあって、噛むほどに磯の香りと旨味がじわっと広がります。

炭火で焼かれた魚介はやっぱり格別。
「牡蠣は塩だけで。元々、塩っけがあるからね」そう言って出された牡蠣は、驚くほどまろやか。苦みや臭みは一切なく、海そのものの旨味がじんわり広がります。炭火で焼くことで、水分がゆっくりと閉じ込められ、やさしい甘みが引き立つのだとか。

炭火で焼いたお餅が入ったお味噌汁。お餅は海女さんのおやつでもあるそうで、炭の香りがほんのり移ったやさしい味にほっとします。
たくあんが添えられたウニ飯は、ウニとひじきを混ぜ込んだ相差の名物。ひと口目からウニが濃厚で、口の中がふわっと幸せになりました。

食事を楽しみながら、自然と始まるのが海女さんとの会話。春はワカメやヒジキ、夏はアワビが獲れるんだとか。
驚いたのは、中村さんをはじめとする海女さんたちのタフさです。朝3時に起きて準備し、漁に出て、一部の魚は自分で売る。さらに畑仕事もしながら、居酒屋まで切り盛りしていた時期もあったそうで、平均睡眠は2〜3時間だったのだとか。プライベートの時間も、ほとんどなかったといいます。
話を聞くほど、海女さんは本当に働き者で、体力も気力も桁違い。同じ女性として、ただただ尊敬。資料館で見た、自立という言葉もしっくりきました。

また、近年は温暖化の影響で海藻が減り、ウニやアワビの漁獲量も激減していることも教えてくれました。「昔はウニ100個採れたけど、今は1個です」海の変化を、肌で感じてきた人の言葉。炭火を囲みながら聞くその話は、教科書よりもずっとリアルでした。
現役の海女さんから直接お話を伺えるなんて、あまりにも貴重で、質問が止まりません。これだけで記事を一本書きたくなるほど…。海とともに生きてきた人の言葉には、やっぱり重みと温かさがあります。
海女小屋での体験は、単なる食の体験ではなく、相差という町の文化そのものに触れられる時間でした。
4) オウサツキッチン

神明神社の参道を歩いたあとの休憩に、ちょうどいいのが「オウサツキッチン」。テイクアウトでもイートインでも使えて、相差の味を重すぎないボリュームでつまめるのが魅力です。

店内に入ってまず目を引いたのは、少し変わった形の天井。聞くと、船底をイメージしているのだとか。海の町らしい遊び心が、さりげなく効いていました。

相差名物を一度に味わえるのが「サンドセット(1,100円)」。サンドにドリンク、そしてところてんまで付いてくるうれしさです。

ドリンクは人気No.1の「レインボーところてんサイダー」を。カラフルで写真映えするのに、飲んでみると意外とすっきり。ところてんがちゅるちゃると口の中に入っていきます。

そして、ここで絶対に食べたかったのが「ザコフライサンド」。鳥羽のご当地バーガー「とばーがー」の一つです。
ザコとは、大きさが不揃いだったり数がまとまらなかったりして、市場に出しづらい魚のこと。日によって魚が変わるため、どんな魚に出会えるかはその日次第。訪れてみないとわからない、そんなサプライズも楽しみのひとつでした。

この日のザコは、タイとヒラメ。相差の海で水揚げされた魚をひと口サイズに切り、海女さんが採ったワカメを衣に混ぜて揚げたザコフライをサンドにしています。
合わせるのは、少しピリ辛のたちばなマヨ。見た目以上に軽やかで、ぺろりと完食でした。

セットの締めは、ところてん。すっと喉をすべってほどけていき、そこに濃厚なきなこがふわり。
一度に相差の味を堪能できる幸せな時間でした。
5) 海女の家 五左屋

相差のお土産を買うなら、まず立ち寄りたいのがここ。石神さんへ向かう参道沿いにある「海女の家 五左屋」です。

店内には相差らしさがぎゅっと詰まったアイテムが並び、お土産選びがここで完結してしまうほど。

中に入ると、まず目に入るのは高い天井と力強い梁。梁は当時のまま残されているそうで、かつては養蚕も行われていたのだとか。長い年月を重ねた空間に、今の相差の魅力がやさしく息づいていました。


築80年のこの建物は、もともと住居だったものを活かした空間。奥には当時の台所や囲炉裏がそのまま残り、かつての暮らしの気配を今も感じられる空間です。

お土産コーナーに目を移すと、相差といえば…のドセーマン・ドーマンのアイテムがずらり。ハンカチやタオルなどの布ものはもちろん、香りアイテムまで揃っていて、想像以上の充実ぶりです。

オリジナルとして作られているものも多いそうで、「ここでしか買えない」感が、お土産選びのテンションを上げてくれます。

私は人気No.1のガーゼハンカチを購入。気軽に身につけられて、持っているだけでなんだか運がよくなりそうな気がします。

セーマン・ドーマンの印が背中に入ったネコのおきもの。くるっとした表情がなんとも愛らしく、カラフルな色合いにも元気をもらえそうで、私は緑色のネコをお迎えしました。

海女小屋でいただいてお気に入りになったのが、あらめ。相差の特産品でもあり、そのやさしい磯の香りが忘れられません。おうちに帰ってからも相差を思い出せるように、お土産に買って帰りました。

相差には「かに優先」の看板があるそうで、それをモチーフにしたユニークな豆皿も。

鳥羽市の花「大和橘」という、小さな金柑のような柑橘を使ったグミや、牡蠣醤油など、鳥羽らしい味わいの品も揃っていました。

6) 千鳥ヶ浜

鳥羽十景にも選ばれている千鳥ヶ浜海水浴場は、透明度の高い水質で知られるスポット。夏は海水浴客でにぎわうそうです。丸善から徒歩約7分と近く、ふらっと歩いていけるのがうれしいところ。

ここから眺める日の出は格別だそうで、冬の空気が澄んだ日には富士山がみえることもあるのだとか。私が訪れた日は残念ながら見えませんでしたが、いつかリベンジしたいです。
7) 参道を歩く


神明神社までのなにげない参道を歩く時間も旅の醍醐味。ぷらりと歩いていると、路地の端に貝殻がずらりと敷き詰められている場所がいくつもありました。
拾ってきたのか、寄せておいたのか。理由はわからないけれど、ところどころで海の気配を感じ、そのたびに嬉しくなりました。

海藻を売る小さな販売所も。気さくで元気なおばあちゃんたちとのやりとりにほっこり。静けさのなかに温かさがある。相差は、どこか懐かしくも感じられる場所でした。
11. 相差を満喫する1泊2日モデルコース

相差は、泊まってこそ魅力がじんわりわかる町。今回は泊まった「丸善」を起点に、相差を心ゆくまで堪能できました。
ここからは、私が実際に訪れたスポットをベースに、1泊2日のモデルコースをご紹介します。
1日目:相差観光を満喫する日
・鳥羽・相差へ
・石神さん参拝
・海女小屋「相差かまど 前の浜」で海の幸ランチ
・相差海女文化資料館で海人文化を学ぶ
・「海女の家 五左屋」でお土産探し
・オウサツキッチンでカフェタイム
・丸善チェックイン(お宿でのんびり)
2日目:余韻を連れて、次の旅へ
・千鳥ヶ浜で朝日をみる
・丸善チェックアウト
・伊勢志摩観光へ
丸善から主要観光スポットはどこも徒歩10分圏内。スポットも密集しているので巡りやすいのも魅力です。
12. 鳥羽駅から丸善までのアクセス!車や公共交通機関での行き方

名古屋駅から鳥羽駅まで行き、そこから「丸善」の送迎車でお宿へ。鳥羽駅からは車で約25分、窓の外にはのどかな景色が流れていました。

13. 相差のごちそうと海女文化を、丸善でまるごと味わう旅

相差は、海とともに生きる人の暮らしが、いまも静かに息づく町でした。
海女さんの言葉に耳を傾け、セーマン・ドーマンの祈りに触れ、伊勢海老をはじめとする海の恵みを心ゆくまで味わう。そんなひとつひとつが、ただの観光ではなく、相差という土地と出会う時間だったのだと思います。
そして丸善は、相差観光の拠点にちょうどいい立地。さらに宿には現役の海女さんがいるからこそ、相差のおいしさと暮らしの背景を、どちらも深く味わえました。
食べて、体感して、あたたかさに包まれて。気づけば「また帰ってきたい」と思っている自分がいる。そんな魅力が、丸善、そして相差にはありました。
「次は大切なあの人と行こう」と自然に思える。丸善には、そんなパワーがありました。私も、次は大切な人を連れて、また戻ってきたいと思います。
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